今はただ鬼は闇の中に佇んでいる
泣いた青鬼
赤鬼と別れて旅をしていた青鬼が木陰で休んでいると
梢から小鳥たちの声が聞こえました
「赤鬼が殺された」
「可哀想な赤鬼」
「人間は怖い」
青鬼は驚いて赤鬼の元を訪ねると小鳥の言葉は本当で赤鬼は人間たちの犠牲になっていました
青鬼が赤鬼が死んだ場所に行くと茅が風にそよいでささやきました
「赤鬼は死んだんだ」
「川が氾濫しそうになった嵐の時に堤が崩れないように支えて赤鬼は殺された」
「あんなことができるなんて恐ろしい鬼は退治した方がいいと村人に殺された」
青鬼は怒り狂い村を襲いました
村人は逃げ惑います
でも青鬼は人間を殺そうとしてとうとうできません
人間と友達になれたらいいなといっていた赤鬼を思い出したのです
青鬼が去ると村人たちは「逃げ出した追い払ったよかったよかった」とうかれて宴を開きました
山の上から青鬼はそれをみていました
その時です赤鬼が支えていた土手が決壊して鉄砲水が村に押し寄せてきたのです
青鬼はただそれを眺めていました
村が濁流にすっぽりと呑み込まれるのをみつめながらずっと青鬼は泣いていました
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はてなダイアリーからの再録
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気がつけば季節は春